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ミステリの祭典

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シークレット・エクスプレス

作家 真保裕一
出版日2021年08月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2024/05/21 18:03登録)
JR貨物に航空自衛隊から急な依頼があった。青森県の東青森駅から佐賀県の鍋島駅まで、特殊燃料を緊急輸送して欲しいというのだ。元運転士で、ロジスティックス本部に勤務する井澄充宏は、自衛隊の訓練輸送に携わった経験を買われ、臨時列車の編集作業だけでなく同行を命じられる。政府の強い意向を盾に、JR貨物側には徹底した情報統制を要請し、警察関係者を同乗させるなど、度を越した荷主側の態度に加え、荷は液体燃料ではあり得ないことを運転士から伝えられた井澄の疑念は募っていく。妨害工作に苦慮しながら、無事に臨時列車を走らせるために人智を尽くす井澄らJR貨物の職員たち。積み荷の正体を知るために、体当たり的な取材にのめり込む新聞記者。手段を問わず隠蔽行為を暴こうとする原発監視団体。立場の異なる三者の思惑を交錯させながら、列車の運行に従って物語はスピーディーに動いていく。製品データの改竄や隠蔽体質など、国や民間に関わらない組織のモラル低下を背景に、豊富な取材に裏打ちされた描写で、現場で働くプロたちの矜持を描いた鉄道サスペンスである。

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