ポケミス読者よ信ずるなかれ |
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作家 | ダン・マクドーマン |
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出版日 | 2024年04月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2024/05/14 05:02登録) (ネタバレなし) 1976年のニューヨーク。市街地から離れた狩猟場「ウェスト・ハート」に設置された会員限定の狩猟クラブの宿泊施設に、35歳の私立探偵アダム・マカニスが現れる。マカニスはクラブの一員である老医師ロジャー・ドレイクの息子ジェームズの学友だったが、今回のマカニスはそれとは別に誰かの依頼でこの場に来訪したようだ。クラブに参加する主だった4つの家庭やほかの関係者と接触するマカニスは、一同の人間関係の綾や過去の秘話などを少しずつ見知っていく。そしてそんななか、ひとりの人物が死体で発見された。 2023年のアメリカ作品。ポケミス2000番突破記念の一環で、叢書の通しナンバー2002番で刊行された一冊。 なんともぶっとんだ邦題だが、これは早川側の演出のようで、実際の現代は「WEST HEART KILL」。キルの意味は通常の英語の「殺す」ではなく、ポケミス本文の139ページ目で語られるので、気になる人は実際に読み進んで、そこまで待とう。 60~70年代の文学派私立探偵小説みたいな仕様の設定と物語のスタイルだが、それはあくまで大筋で、作者は序盤からメタ的な小技・中技を、あれやこれや使いまくる。ここで具体的な例をあげて興を削ぐのは本意ではないので、とにかく最後の最後までオモチャ箱をひっくり返したようなギミックが満載の長編であった。 奇妙奇天烈な、オフビートなミステリを読んでみたい、という向きになら、まさに願ったり叶ったりの一冊ではある。 ただし大皿に山盛りされたギミックが全部、同じ決着点に向けて足並みを揃えて機能している作品かというと必ずしもそんなこともなく、書き手は単に好き勝手しまくっているだけのような気がしないでもない? 巻末の解説で小山正は懸命に、作中の仕掛けの累積に作者の自覚的な意味性を見出そうとしているようだが、個人的には、はて? どんなものでしょうね? 作者はそこまで考えてるのかな? といささかニヒルな思い。 いや、あれこれと、受け手が妄想の翼を広げる事こそがオモシロイ作品だということは、よ~くわかりますが(笑)。 スゴイ作品とか、ぶっとんだ怪作(快作)だとか賞賛するよりは、作者がやりたいこと、思いついたことをやりまくって、それでそこそこヒットした作品、という受け止め方がいいんじゃないかなあ、と思う。 いや、軽視するのではなく、それなり以上にこの作品を楽しませてもらいましたが。 (ただ正直、序盤5分の1くらいはかなり退屈で眠かった。途中からはサクサク、ページをめくった。) まあ興味が湧いた方は、どんどんお試しされることをオススメする。 最初っからヘンな作品だと思って読んで、怒る人はそういないだろうし。 ◆作中で『アクロイド』だの『カーテン』だのの大ネタをバラシたり、暗示したりしてるので、その辺はくれぐれも注意のこと。 |