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ミステリの祭典

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風に立つ

作家 柚月裕子
出版日2024年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 HORNET
(2024/05/06 21:54登録)
 小原悟は、南部鉄器工房の長男にして職人。仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父に反発を感じながらも、職人としては尊敬する存在として日々を過ごしていた。ある日、そんな父が、少年の更生のための一時預かり制度「補導委託」を勝手に引き受け、非行歴のある少年を受け入れることに。「自分には愛情を注がないくせになんで…」納得いかぬまま少年を迎え、工房で共に働くことになった悟だが、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の心にも少しずつ変化が訪れて……。

 ぶっきらぼうで、分かりやすい愛情を示さない父に反発と嫌悪を感じる主人公と、そのもとにやってきた非行少年。「なんでこんな面倒を抱えてきたんだ」と距離を置こうとする主人公が、次第に変化していく中で、それが父親との関係性ともリンクしていく。物語を編み込む手腕はさすがである。
 事件が起きたり、謎解きが据えられたりしているわけではないので、ミステリではない。が、少年・春斗が抱えているものはなんなのか、父・孝雄の過去には何があったのか…など、事の真相を探っていくという要素はある。ミステリの採点サイトという性質を踏まえて評価を差し引いても、このぐらいはつけたくなる一作だった。

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