雨の日の二筒(リャンピン) |
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作家 | 五味康祐 |
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出版日 | 1986年11月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | メルカトル | |
(2024/05/02 22:30登録) 賭麻雀で生活する片腕の男、摸牌する指の動きで牌種を当てる謎の美女、柔和な牌さばきに潜む中国人の巧妙なインチキ等々…麻雀狂を魅了する人間群像を描いた傑作麻雀小説短編集! 『BOOK』データベースより。 私が読んだのは登録できない、1976年グリーンアロー出版社版で、単行本サイズよりやや小さめの、何でしょうか私はその版型の名を知りません。いずれにせよ、大昔の本でその頃から五味康佑は麻雀を打ち、麻雀小説を書いていたのだと思うと何とも言えない感慨があります。この人の場合は時代小説のイメージが強いと思いますが、私にとっては雀豪の一人なんですね。 さてその小説はというと、なかなかの出来であり、闘牌シーンこそ少ないですが、その代わり人間を描く事に関しては流石なものがあると思います。 最初の『傷んだ骰子』は自身の麻雀に対する理念を核とした、私小説の様なもので、まずは自己紹介代わりの一作と言えるでしょう。そして白眉はやはり表題作で、名作と呼んでも差し支えないと思われます。麻雀のルールは一つひとつ取り上げて総合すれば無限とも言えるので、初めての場に着いた時は必ず確認する必要があります。それにしても、本作のルールは初めて知るもので、ネタバレに繋がるので詳細は避けますが、そんな変わったルールは聞いたことがありません。だから場が荒れる事必至で自然と戦況は白熱するはず。この作品ではその様は敢えて描かれていませんので、やや拍子抜けな感もあります。が、小説或いはエンターテインメントとして優れており、戦いが終わった後には清冽な後味が残ります。これは印象深くて良かったですね。 |