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ミステリの祭典

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ベイルート情報

作家 松本清張
出版日1977年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 斎藤警部
(2024/04/30 13:15登録)
脊梁/晩景/軍部の妖怪/ベイルート情報  (文藝春秋)

四作それぞれ細部まで読み応えはあるが、前半二作は結末萎んで惜しいかな。「田舎の事件」「特許侵害(牛乳のフタの..)」「十五年戦争」「中東情勢」と物語の背景は様々だが『裁判』という一応の共通項はある。でも全体見て締まりが緩い感はある。埋もれ気味なのもちょっと納得、清張基準では二線級の寄せ集め的(やや長い)短篇集。

とディスってはみたものの、後半二作はそれなりの重さと熱さでそれぞれ光を見せてくれた。「軍部の妖怪」の物語性ある分厚い人物評伝が呆気なく無様に墜ちて見せる、どこか爽やかに風の吹き抜ける結末。「表題作」は紀行文に寄せたスチャラカ軽クライム短篇、ヒントもやたらアカラサマなばかりと思いきや。。見事に油断させられました。。 あの『ダミートリック』が最後に瞬殺でひっくり返される逆説の輝きもグッド。勢いで吐き棄てる様に海外某短篇のネタバレする清張さんの稚気?に苦大笑い。 物語における『裁判』のプレゼンス、文字数で言えば本作が最も微々たるものかも知れないけれど、その意味する所の熱さはこいつが一番と見た。 そう思えば、やはり本短篇集は『裁判』を通しテーマとした、一本筋の通った作品集なのかも知れない。

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