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ミステリの祭典

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閻魔堂沙羅の推理奇譚 A+B+Cの殺人
閻魔堂沙羅

作家 木元哉多
出版日2020年09月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 人並由真
(2024/04/21 08:52登録)
(ネタバレなし)
 閻魔大王の娘・閻魔堂沙羅は、父の代理執行の職務から離れ、人間界で期間限定の休暇を楽しんでいた。そんな沙羅はとあるホームセンターで、万引きしかけていた小学六年生・宮沢志郎と、その小二の妹・汐緒里に出会う。兄妹の父・竜太はいろいろな事情が重なって酒浸りで生活能力がなく、母の夏妃は重病で病院で死を待つばかりだった。だがそんな一家の周辺に謎の刺客が迫っているのを、沙羅は察知する。

 閻魔堂沙羅シリーズ第7弾。
 3年半前の旧刊だが、シリーズのなかでこの巻だけ、今までなんとなく読み残していたので、今回、思いついて消化する。
 シリーズ前作に続く二回めの長編仕立てで、キャラクタードラマの比重が大きい。ミステリの謎は小粒だが、良い感じでその核に向かって、敷居の低い人間ドラマが築かれていく造りで、なんかケメルマンの「ラビ」シリーズとかを思わせる。
 その上で、今回はそのドラマ部分が予想以上によく(単に評者の好みのタイプの話というだけかもしれんが)、それがミステリ部分とも有機的にかみ合っている。
(実は、人間心理的に納得できるかどうかで、ちょっとグレイゾーンな部分もなくはないのだが、まあ許容範囲。)

 正に「人間賛歌×本格ミステリ!」(←本シリーズ二冊目の惹句)で、良作であったが、現在のところ、これが本シリーズの最新刊で現状の最終巻。
 そろそろ8冊目が出て欲しいし、待ち望んでいるファンも多いとも思うが、作者の方はもうこのシリーズでやることはやり尽くした、みたいな思いがあるのかもしれない?
 一昨年にはノンシリーズの方で新刊が出たし、昨年は新作自体がナシだったしね。
 本作のクロージングは特にシリーズの締め、みたいな演出はしてないので、うっすらと希望は持ってはいるけれど。

 そーいや、今回はおなじみの呪文を沙羅は言ってなかったな。あと、人間全般に対する感慨も、いつもより濃い目に心情吐露されている。その辺が実は、シリーズ終了のサインだったりするのか? 

 評点は応援と新作期待の念を込めて0.3点くらい、おまけ。ちちんぷいぷい。

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