home

ミステリの祭典

login
悪霊に追われる女
実作:大谷羊太郎

作家 鷹見緋沙子
出版日1987年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2024/04/18 04:12登録)
(ネタバレなし)
 28歳の平泉順子の夫は、小さな建築設計事務所の所長で、昔は彼女の大学時代の先輩でもあった、31歳の平泉洋治だ。だが順子の実家は大地主で、彼女は夫の収入に頼らず自分だけの巨額の財産を持っていた。夫の洋治のことは愛している順子だが、彼女は一年前から洋治の学友(親友)でやはり順子の先輩だった寺西研二と秘密の不倫関係を続けていた。そんなある夜、順子を乗せて寺西が運転する車が人気のない場所で、若い女を轢いた。寺西は順子を説き伏せて死体を隠すが、ほぼ一年後、周辺で白骨死体が見つかる。そして謎の脅迫者「白川保根夫」が寺西に巨額の口止め料を要求してきた。そして順子の周辺には、轢死されて骨になったはずのあの女の亡霊が出没する!?

 大谷・草野・天藤によるハウスネーム作家「鷹見緋沙子」の第9長編で、最後の著作。本作の実作は、大谷の筆によるものらしい。
 本サイトで鷹見名義、あるいは天藤名義などで登録のない鷹見作品を何か読もうと思っていたら、Twitter(現Ⅹ)でこれが評判良さげだったので、手にとってみた。
 
 本書の裏表紙には、路線を当初のパズラーから官能サスペンスに転換した作者の新作、といった主旨のセールストークがある。
 実際に美貌の若妻の不倫は本作の主題だが、実作者・大谷の作風か、予想される(?)こってりしたイヤらしさは希薄で、全体にサバサバした文章で話が紡がれた。いまの時点であえてジャンルを言うんなら、和製フランス・ミステリだろうね。
 
 結局はキワモノ、ゲテモノになるんだろうなと軽く見ていた部分もあるが、最後に明かされる真実で物語の構図が小気味よく変貌。なかなか面白かった。
 遡って考えれば、話が一部スムーズに流れ過ぎたきらいもあるが、まあ許容範囲。登場人物メモを取りながら、それでも2時間で通読できる佳作ではある。評点は7点に近い、この点数で。

1レコード表示中です 書評