教え子殺し 倉西美波最後の事件 倉西美波 |
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作家 | 谷原秋桜子・愛川晶 |
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出版日 | 2021年11月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 5点 | 麝香福郎 | |
(2024/05/22 20:26登録) 現在を描いたメインのパート、未来であるメールのパート、LINEによるやり取りの三つのパートから構成されている。 メールは犯人による告白である。女性の首をナイフで切り裂き殺したというのだ。しかもその行為に一切の後悔はない。なぜなら彼女は自分を罠にかけ、セクハラ教師の汚名を着せて退職させた女子生徒であったからだ。彼女の名前は美夏という。ところが犯行現場には、メールの書き手が「君」と呼ぶ第三者がいたらしい。 犯人がメールを書いているのは、七月八日の夜。どうやら犯行はその日の午後に起きたらしい。メインストーリーは六月の下旬から始まり、やがて七月に入り美夏は学校に姿を見せなくなる。 作者は犯人のメールをあちこちに挿入することで、何が起きたかを徐々に提示し、その一方で時を遡り、カタストロフまでを現在進行形で描く。一方で、犯人は誰に宛ててメールを書いたのかなど、残された様々な謎が読者を迷路に誘う。そしてすべての謎が解明された時、眼前にまったく違う景色が出現するという企みに満ちた作品である。 |
No.1 | 5点 | 虫暮部 | |
(2024/05/09 11:47登録) 手記がこういう風に使われてたら、トリックの方向性も見当が付いてしまう。また、物語後半での美波の動きがどうも不自然で、話を収束させる為の作者の駒になってしまった。 送り主不明のメールを素材にあれこれ推理するのも妙な感じ。手紙とかノートとかフィジカルなものでないと、自在に加工可能だから根本的な信頼性が著しく低い――との考え方はもう古い? ところでこれは一体どういう形で共作したのだろうか。両者の個性がシームレスに融合して、ぎこちなさ皆無。まるで同期したような、憑依したような、驚異の一心同体っぷりである。 |