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ミステリの祭典

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ニャロメ、アニメーター殺人事件

作家 辻真先
出版日2000年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2024/04/10 05:57登録)
(ネタバレなし)
 20世紀末(たぶん)の東京。食うに困って、意に沿わないアダルトアニメの作画仕事を受けていた若手アニメーター・五十嵐玄也は、発注先のアニメ製作会社が倒産し、途方にくれる。そんな彼に声をかけたのは中堅アニメ製作会社「早見企画」の社長・早見三樹雄だった。早見の娘で美人の安芸朝夜(あき あさよ)にトキメキを覚えながら、玄也は早見の指示するままに新作アニメの企画書で、往年の人気アニメキャラクターたちをダミーのメインキャラに据えた「探偵王ニャロメ」を完成させた。自由な形式で書かれたその企画書は、一本のマトモな、しかしいささかぶっとんだ謎解きミステリでもあった。企画書「探偵王ニャロメ」の作中で殺人事件を追うニャロメ。だがその一方で、現実の世界でも殺人事件が!?

 二十年近く前に古本で買っておいて(426円の値札がついてる。消費税の過渡期とはいえ、中途半端な値付けだ?)そのうち読もう読もうと思いつつ、月日が経ってしまった一冊(毎度おなじみのパターン)を、このたび一念発起して読了。

 メタ的な側面で「探偵王ニャロメ」作中のニャロメは、おなじく既成のアニメキャラたちが客演する辻作品の旧作『アリスの国の殺人』の世界観と、今回の物語世界がリンクしているという主旨のことを口にする。そういう路線の作品という属性もある。
 2000年の作品で、すでに日本のアニメ界には『エヴァ』も『ポケモン』も『もののけ姫』も登場している時節であり、あとの二つのタイトルは本書の作中にも実際に出て来るが、あくまでメインとなるのは辻先生本人がシナリオの執筆に関わった、60~70年代の旧作アニメばかり。その辺は、意識的に、しっかりとした縛りになっている。

 メタ的な趣向はてんこ盛りの作品で、正直、読んでいて感想(これはオモシロイと思ったり、なんだ生煮えだと嘆いたり、ときに腹立ったり)のゲージが、メチャクチャ上がったり下がったり、であった。
 随所で、あー、狙いは面白いのにこなれは悪い、いつもの辻ミステリ……との感想が喉まで出かかったが、最後まで読んで、まあまあ悪くなかった……佳作? くらいには評価が上がる。作者がいろいろ好き勝手やりまくったことは、ほぼ全面的に肯定したい。

 なお自著において「~殺人事件」のタイトリングは基本的にスーパー&ポテトものでしかやらない作者だが、今回はあえてその禁を破った。しかしそのことについてしっかりあとがきでエクスキューズしている律義さに笑って、微笑む(←今回はこのふたつはちょっとニュアンスの異なる行為)。
 この時点ですでに辻先生、自分をもう老人だのいい年だのと自嘲していた。それから24年、我らの巨匠はいまもご壮健である。
 怪物作家、どうぞいつまでもお元気で(←池田宣政リライト翻訳版『八点鐘』のオルタンス風に)。

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