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ミステリの祭典

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翻訳万華鏡
池央耿

作家 評論・エッセイ
出版日2013年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2024/04/03 18:49登録)
(ネタバレなし)
 昨年の秋に逝去された巨匠翻訳家・池央耿氏が、自分の翻訳業務全般、およびその関連事項や担当した作家の作品の思い出などを書き連ねたエッセイ集。
 最近、文庫化されたが、評者は今回、元版の単行本版の方で読了。

 約50編ほどのエッセイが収録されており、こういう本だから著者がどこかの雑誌に連載した定期エッセイを一冊にまとめたものかと思ったが、エッセイひとつひとつの中には2ページで終わるものもあれば10ページ以上のものもあり、どうやら書きおろしで一冊分の中小の長さのエッセイを書いたらしい。

 広義のミステリ作家やSF作家関連の話題では、著書が担当したハモンド・イネスやネヴィル・シュート、ウェテリンク、メルキオー、アシモフ、ホーガンなどの話題が続出。それら全部の作家に接点がある評者としては、非常に楽しかった(とはいえもちろん、ピーター・メイルとかハロルド・アダムズとかまったく手付かずの作家も少なくないが)。
 変わったところではマフィアブームの70年代前半「マフィアへの挑戦」の翻訳メイキング的な話題にも、(そんなに深い細かい話ではないが)ちょっとふれられている。

 あわせて翻訳家としての心構えや、翻訳の実務の礎となる言語文化そのほかのアカデミックな話題など、中味は相応に広い裾野を見せるが、語り口は平易で、かつ書き手の素養も豊潤なので、それはそれで興味深く読ませていただく。
(読んだ内容が、のちのち、最終的にどのくらい身に染みこむかは、微妙だが・汗。)

 単行本巻末の翻訳業務のリストを拝見するに、その長大なお仕事の実績にため息が出るばかり。ああ、『ウィンブルドン』とか『コンドルの六日間』とか『雲の死角』とかもこの方の訳書だったんだっけ、カーの後期作ななんかにもご縁があったんだっけ、としみじみした思いに浸る(当然ながら、文庫版のリストは、さらに数が増えてるだろう)。

 長い間、ありがとうございました。改めましてご冥福をお祈り申し上げます。

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