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ミステリの祭典

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ウルトラマンF

作家 小林泰三
出版日2016年07月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 人並由真
(2024/03/29 01:33登録)
(ネタバレなし……あ、もしノリで、口が滑っていたら、お許しを・汗
  ~なるべく気をつけているつもりだけど)

 多くの凶悪怪獣や侵略者の宇宙人から人類を守ってくれた光の巨人ウルトラマンが地球を去って、およそ一年。国連の科学機関は各事件時の状況データから、科学特捜隊日本支部の早田進(はやた しん)隊員の肉体にウルトラマンが憑依していた可能性が高いと推定。その秘密を解明しようとしていた。同時に、人工の地球版ウルトラマンを生み出そうとする軍事科学プロジェクトチームの天才科学者インペイシャット博士、そして科特隊の隊員・井出(いで)光弘は、それぞれ人間を巨人化させるテクノロジーを研究。前者は日本に棲息する昆虫モルフォ蝶の特殊な生態因子に、後者は同僚の女性隊員・富士明子(ふじ あきこ)を一時的に巨人化させたメフィラス星人の科学技術に可能性を探ろうとするが。

 単行本の書籍版で読了。
 わははははははははは。どう受け止めるべきか。コレは。

 <ウルトラシリーズヲタクの作家の書いた1000%厨二病作品>なのは間違いないものの、それでも今は亡き作者のとめどもなく深いウルトラ愛に、まずはウハウハ喜ぶばかり。
 そういった作品の形質的な前提を了解し、一度その方向性に身を預けてしまえば、これ以上ない心地よい快感に痺れきることのできる<ファン・トゥー・ファン>の公式ウルトラノベル、である。

 テレビシリーズ『ウルトラマン(初代)』正編の最終回、その後を起点とする世界線をひとつ設定し、そこから映像上の光の国路線(いわゆる『ウルトラマンメビウス』史観)とはまた違う未来図を覗かせていく(しかし、パラレルワールド的に、後続のウルトラ作品の要素もあれこれふんだんに取り込む)、というのはまんま清水栄一×下口智裕のコミック『ULTRAMAN』と同様だが、こっち(本作)の方はそっちに輪をかけて豪快で、そして面白かった。
(特に第3章での<あの連中>との対決の場で、某メインキャラが叫ぶ

「ウルトラマン(××←あえて中略……)は、アルファにしてオメガ」(書籍版P209)

 の一言には、興奮と感動で脳みそが沸騰してぶっとんだ!)

 とはいえ、まあ、アラシとフルハシ、アキコと由利子それぞれの双子ネタなんかとか、何を今さら、昭和の第一次アニメブームのころの、おぼこの中高生特撮ファンかい! と思わずぼやきたくなるような箇所もなきにしもあらず。
 この辺を含めて、たとえ21世紀のウルトラファンであっても、受け入れられないオトナな読者が全国に山のようにいるのは、よ~~~くわかる。
 ただまあ、それでもその双子ネタの後者なんか、このお約束設定をなかなかうまく活かした描写へとつなげてあって(書籍版P129)、そーゆーのを読まされると……あー、やっぱヨワいのだな、こーゆのに、こっちは(汗・笑)。

 合わない人が、悪い意味で敷居の低い厨ニ的二次創作! とかそしってとことん拒否するのも、
 一定数の新旧世代のウルトラファンが、最高だ! とウハウハ喜ぶのも、
 どっちもよ~くわかる一冊。
 つーわけで、こっちは条件付きで、この評点じゃ(笑)。

 まあ、まだまだあのネタもこのネタも放り込んで取り込んでほしかったというのは、冗談抜きに何十何百とあるけれど、それでも得点的に見れば、たぶんこれまで日本語で書かれたウルトラシリーズの小説作品の中では最高級のファンサービスぶりだよ、これ。

 オリジナル作品を著したミステリ作家・SF作家・ホラー作家としての小林先生に関しては、とてもしっかりした物事を語れるほど著作を読んでない評者(たぶんまだ3~5冊くらいだと思う)だけど、同じウルトラファンとしてはその愛情の深さに素直に脱帽。
 改めてご冥福をお祈りいたします。

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