一本足のガチョウの秘密 ジョニー・フレッチャー&サム・クラッグ |
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作家 | フランク・グルーバー |
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出版日 | 2024年04月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2024/05/21 14:12登録) (ネタバレなし) 常宿である「四十五丁目ホテル」の宿泊代を滞納中のジョニー・フレッチャーと、サム・クラッグ。さらにそこに、以前にサムが月賦で購入した楽器の残金が未払いだと、強面の巨漢の借金取りJ・J・キルケニーが押しかけて来た。キルケニーに対応したジョニーは成り行きから、手数料をもらうという約束で、別のキルケニーにとっての債務者である美女アリス・カミングスの借金の取り立てを代行することになる。だがこれがまた、新たな殺人事件の幕開けにつながっていく。 1954年のアメリカ作品。ジョニー&サムものの第13番目の長編。 もはやおなじみのユーモアミステリの世界に付き合うために(だけ)読むという感じの一冊。 良くも悪くもなじみの店の定食を食べている気分だが、それはそれで悪くはない。 苦労して財を成した大富豪カーマイケル老が、まだ若造のジョニーに妙な親近感を覚えるらしい描写なんかほっこりする。 タイトルの意味は生きた鳥のことではなく、アンデルセンの鉛の兵隊みたいに、製造上の事情から片足が欠損して完成したガチョウ型の青銅の貯金箱のこと。事件に関わるアイテムになる。 今回はサムがシリーズでは珍しい? はずのピンチに陥り、その辺がちょっとした趣向か。 フーダニットのミステリとしてはもはや読者に推理させる気なんかカケラもない決着で、その開き直りぶりにはさすがにちょっと唖然としたが、むしろ今回は(中略)が最終的にどういう意味をもっているのか? を終盤までに当てるのが、謎の眼目の作品ということだろう。たぶん。 ついにシリーズの未訳の残りもあと一冊。発掘翻訳企画のレールを敷いてくれた今は亡き仁賀克雄と各作品の翻訳家、それに論創社に改めて感謝。 (まあ自分はまだ、全部のシリーズのうちの半分くらいしか読んでないと思うけど。) |