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ミステリの祭典

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ねじれた蝋燭の手がかり

作家 エドガー・ウォーレス
出版日2023年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2024/03/16 15:25登録)
(ネタバレなし~作品全体の構造については、多少触れるかも)
 やさしい美貌の若妻グレースを持つ探偵小説作家の青年ジョン・レックスマンは、投資に失敗。高利貸しヴァッサーロからの返済の取り立てで苦しめられていた。そんなレックスマンに友人である美青年のギリシャ人レミントン・カラは、交渉の上でのあるアドバイスを授けるが、やがてその事実はレックスマンの運命を大きく変えていく。レックスマンのもう一人の友人で、ロンドン警視庁総監補のT・X・メレディスは、苦境に陥った友のために尽力するが、事態はさらなるステージへと推移していく。

 1918年の英国作品。
 個人企画? で未訳の海外旧作の発掘に尽力する希望の星・白石肇が翻訳刊行した一冊。
 解説によるとヴァン・ダインの『ケンネル殺人事件』の作中で話題になる一冊で、そういう意味でかねてより日本のミステリファンにも、ごくうっすらとではあるが、知られているはずの一冊であったということである。そういう日本の翻訳ミステリ史において、なんらかのフックがある作品を発掘翻訳し、ある意味で隙間を埋めようという企画が実に素晴らしい。どんどん、あれもこれも出してほしいものである。

 前半の物語は、レックスマン、カラ、メレディスという三人のキーパーソン的な主要人物の行動の交錯を軸に展開。良い意味で大時代なエンターテインメントというか英国の古典スリラーの趣を見せるが、中盤~後半で思わぬ殺人事件が発生。フーダニットの謎解きパズラーっぽい方向に、変調する(あまり書かない方がいいけど)。
 なんだこれは、とワクワクしながら読んでいるうちに、タイトルの意味も回収。まあ最終的にはトリックはあっても、謎解きパズラーとはとうてい言えない作品として終わるけどね。そういう意味でのジャンル越境のハイブリッド感はなかなか面白かった。
 
 訳者の解説にもあるように、もともとは中年風に描かれていたメレディスが、後半いかにも恋する若者に変貌して、作者、おまえ設定忘れただろ、とツッコミたくなるようなラブコメ模様とかもなかなかユカイ。
 読み手をリアルタイムで楽しませるんなら、当初からの作品の整合などさほど気にせん、と言わんばかりのザルぶり……いや、書き手の豪気さに笑わされる。
 
 秀作でも、もちろん優秀作でも傑作でもないけれど、読んでとても楽しかったクラシックミステリ。ウォーレスという大衆向け職人作家の実質がよく出た一作だと思う。
 7点は……さすがにあげられないか。まあ気分的にはソレに近いこの評点で(笑)。

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