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ミステリの祭典

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雪に残した3

作家 新田次郎
出版日1962年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 斎藤警部
(2024/02/20 21:41登録)

   土樽よいとこ
   またおいで
   皆さんなじみの
   ヒゲがいる

『ダイイングメッセージ作成をリアルタイムで目撃』 という尊きレアケースから始まる雪山物語。 死に際に遺す「3」なんて言ったら、クイーン某短篇で語り尽くされた(?)様に、文字通り(文字通り)、多方向からの憶測を呼ぶものですが。。

「なるほど、それでどうしたんだ。おれはこの年で推理小説のファンなんだ。昔は女に興味を持ったが、このごろは女よりも読書に興味を持っている。」

山の仲間が山中にて不審な死を遂げ、同じ山の仲間たちを巡って次々に顕れた疑惑につぐ疑惑。 探偵役「星野」は在京山岳会の会長にして零細出版社の社員。 山岳会の仲間たちや取引先社長の力を借りて真相糾明へ向かいジリジリとアプローチ。 やがて迎える容疑者3名揃えての「山の裁判」を前に、晴れやかな出発の勢いと、微かな翳り。 まさか、稀代の “バカ真相” ではアルマイナと少しばかりの危惧も持たせつつ。。 含みを持たせたやらしい結末 ・・・

「推理小説はいい。最後まではらはらさせながら読ませるあのもたせかたは、なんともいえない味があるぞ。」

山岳推理小説ではおなじみの「山男ならではの純粋さ云々」と「山男だからと言って純粋とは限らない云々」、相反する二つのキーフレーズは五月蠅くならない程度にやはり登場。 俗物としか映らなかった「◯◯」の豪快な問題解決者ぶりに胸のすく熱いシーンもあった。 

「金次第だ。金さえあればなんだってできる。その金は俺が出す。」
“星野は何か明るいものを目の前に感じた。問題はやはり金である。”

自然の怖さなどは然程伝わって来ず、山の空気の爽やかさなど割と小ぢんまり描写されるばかりだが、其れも又佳し。 地味ながら不思議なワクワク感、ばらけた様で何処か締まりのある、小味で愉しい小品(長篇)です。

“裁くのはおれだ。しかし、裁かれる者はそれを知っているであろうか”

或る登場人物の◯◯◯○ー○というか○○が後出しに過ぎるのだけは、あきれて物も言えなかったが(でも仕方無いのかな。。)。。。 本当は本格推理とは言い難いのだが。。だが敢えて本格と呼びたくなるのだな。。 繰り返しになりますが、本作の結末、含みのある独特のやらしさは一度味わってみて損は無いでしょう。

ラーメンと、マッチの図案、最高だね!


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