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ミステリの祭典

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カラス殺人事件
生態学博士ネル・ワード

作家 サラ・ヤーウッド・ラヴェット
出版日2023年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2024/02/15 02:54登録)
(ネタバレなし)
 その年の8月25日。英国の片田舎ベンドルベリーで、まだ26歳の新妻で荘園領主のソフィ・クロウズが何者かに殺害された。地元警察のヴァル・ジョンソン女性警部、そしてジェームズ・クラーク巡査部長は、事件当日に被害者と面談する約束をしていた33歳の生態学博士でコウモリ研究が専門のネル・ワードに疑惑の目を向ける。だがその一方で、ジェームズは美人のネルに内心で一目ぼれしてしまった。

 2022年の英国作品。
 邦題にカラスとついていて、主人公が生態学者(本作では動物学者と同意)というから鳥類のカラスが事件の主題かモチーフになる内容かと予期したら、とんでもない。被害者の名前がクロウズ(複数のカラス)だから、それだけの話だった。
 2020年代に甦ったキーティングの『パーフェクト殺人』(完全殺人ではなく、パーフェクトという名前の被害者が殺されかかる)か(笑)。

 単純に? 美人生物学者というだけではなく、あるパーソナリティを持った女性主人公ネルのキャラクターが掘り下げられ、同時にジェームズ刑事やネルの同僚のインド系学者アダム・カシャップとかの三角関係に筆が費やされる。そのほかにも総数50人以上のネームドキャラの動向が語られるが、一応は事件や捜査の方の進展もあるのでミステリ要素が忘れられたわけではない。
 ただまあ演出としてミステリの結構やサプライズ、伏線なんかにあまり重きを置いてる作品とは思えず、キャラ描写やコウモリ関連の理系トリヴィアで読み手を楽しませようとしている感触。
 正直、評者にはあんまりノレなかった。主人公ヒロインのネルのキャラは良くも悪くもない、まあ普通という感じ(それでもキモの文芸の部分だけは、さすがにちょっとキュンとなったが)。

 ぶっちゃけ、Amazonでの総じての高評の獲得ぶりが理解できない。犯人もなんというか、実に普通だったし。すでに原作シリーズは6作まで書かれ、邦訳も第二弾が近々に出るみたいだけど、実際のところ、あんまり食指は動かないのであった(汗)。

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