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ミステリの祭典

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完璧な小説ができるまで

作家 川崎七音
出版日2023年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2024/02/02 22:33登録)
レーベルがメディアワークスだけにラノベなのかなと思ったら、ラノベ臭は一切ありませんでした。単行本で出しても問題ない位のレベルです。
序盤はありがちな青春小説ですが、ここである事件が起こりながらも一旦通常運転に戻ります。本当の物語の始まりは中盤、主人公である社会人になった月村のスマホに送られてきた一通のメールだったのです。其処からじりじりとサスペンスが進行していきます。書き方が丁寧な上に、低刺激なので展開としては衝撃的なはずが、あまりそれを感じさせない所が損をしている気がします。

プロットは折原一に似ています、又心理描写は乙一辺りを想起させます。
テーマは作家とは何か小説家とは何か、そして「完璧な小説」とは何なのかというもので、多くの小説家がぶつかるであろう壁に真っ向から取り組んでいます。登場人物は少なくシンプルで、その分頭に入り易い優しい文章に仕立てて、閉塞感を覚えそうなシチュエーションにも拘らず、独特の世界観に読者を誘い魅了します。心情的には7点付けたいところでしたが、柱となるトリックにあまり驚けなかった点を考慮してこの点数にしました。

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