ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪 川出正樹 |
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作家 | 事典・ガイド |
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出版日 | 2023年12月 |
平均点 | 9.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 9点 | 人並由真 | |
(2024/01/15 14:03登録) (ネタバレなし) タイトル通り、戦後初期(一部戦前の時代まで言及)から20世紀終盤の時期まで、海外ミステリ専科、あるいは海外ミステリがメインの、各出版社の叢書(なんらかの統一性のある書籍の企画シリーズ)について語り尽くした本。 旧クライムクラブや六興推理小説選書など、われわれ古参の海外ミステリファンにはマストなものから、Q-Tブックスやウィークエンド・ブックス、イフ(if)ノベルズそのほかのマイナーな叢書にも、基本的には叢書につき記事一項目ずつで言及・解説。主要作品も丁寧に紹介する。 もともとは東京創元社の「ミステリーズ」に2011~17年にかけて連載されたのち、6年ほどの編集・補筆を経て2023年の暮れにようやく書籍化。 「ミステリーズ」を定期購読も古書でまじめに収集もしていなかった評者は、とても気になっていた連載だったが、ようやっと本になったので、新刊書店ですぐに購入し、それからずっと就寝前にちびちび読み進めた。 一応はウン十年もの間、ミステリファンをしている評者だが、ここで初めて教えられた書誌的・あるいは作品や作家に関わる事実も山のようにあり(それらの記述の大半が、あくまで一般ミステリファン&古書コレクターに近い目線での探求なのが、また恐れ入る)、読了までに新情報(自分にとっての)を知って唖然呆然とした事例は両手の指じゃ足りない。 叢書ごとに詳細なデータベースが付与され、さらに同じ作品がのちに別の版で出た場合の追跡までしてある、正に神か悪魔か、この本の著者か! という一冊。 さすがに天文学的に膨大な書誌データの中で1000%誤記がないというわけにはいかなかったが(早川で最初に紹介されたジャック・ヒギンズの作品は『鷲は舞い降りた』ではなく『地獄島の要塞』である)、そんな指摘は巨象の進軍の前で蚤が踊るようなものだろう(汗)。 とにかくすごい本。 ちなみにさすがにポケミスや創元推理文庫などの膨大な叢書についてはまとまった項目立ての記事はない(もちろん本文の随所で話題になったり、触れられていたりする)のは、叢書内の主要作品にまで言及するという基本的な記事スタイルゆえ、難しかったようだ。 それはまったくオッケーだが、できればあとひとつだけ、早川の世界ミステリ全集なども一項目で解説、言及してほしかった(当然、こちらも話題自体はあちこちで出て来る)。 価格はちょっと高いが、内容を考えればとんでもなく安い。 オールタイムの海外ミステリファンで、興味あるジャンルの幅が広い人なら、絶対に買って手元に置いた方がいいよ。というか買いましょう(笑)。 |