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ミステリの祭典

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魔術探偵・時崎狂三の事件簿
時崎狂三

作家 橘公司
出版日2023年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/12/27 19:33登録)
(ネタバレなし)
 彩戸大学に通う女子大生・時崎狂三(ときさき くるみ)は、初対面のお嬢様風の美少女から声をかけられた。同じ大学の同学年(一年生)で栖空辺茉莉花(すからべ まりか)と名乗る彼女は大富豪の令嬢であり、狂三の知人でやはり学友の女子・鳶一折紙(とびいち おりがみ)の紹介を受けて、狂三にとある怪事件の解決を依頼する。これを機に狂三は、この世の条理を超えた「魔術工芸品(アーティファクト)」が絡む怪事件の数々に関わっていくことになるが。

 人気ラノベ作家・橘公司の看板作品『デート・ア・ライブ』の正編完結後の後日譚という設定で書かれるスピンオフの連作短編集。

 主人公は、本来はメインヒロインの一角ながら、いささかイカれた言動で少しほかのヒロインたちとは離れた位置にいた(しかし読者から圧倒的に一番の大人気を獲得した)「きょうぞうちゃん」こと時崎狂三。
 子猫をいじめるサバゲー屑野郎などは遠慮なくぶっ殺すが、子供や猫にはやさしい(そして主人公には時に敵対し、時に味方になる)、そんな女子である。

 ちなみに評者は『デアラ』は正編22巻のうち11~12巻まで読破。そのあとの巻も購入はしているが後半の展開はアニメで先に観ちゃった知っちゃった、すこしアレなファンである(アニメの方もまだ、正編の全部を映像化しているわけではないが)。

 今回の新作では、きょうぞうちゃんを含むメインヒロインたちの立ち位置も大きく変わっている(世界観はそのまま)が、そんなことも実作を読んで初めて知った(なんせ正編の後半を読んでないので・汗)。

 いずれにしろJDになった時崎狂三を主人公(探偵役)に据えて、超能力的な魔術が存在する『デアラ』世界のなかでの特殊設定ミステリ5編が語られるが、謎解き作品としてはまあボチボチ。

 特に第2話なんかは、新本格でこれで何度目だというネタ(評者も途中で気づいた)だが、作者の橘先生はその辺もなんとなく察しているようで、<作者としては意外な解決……のつもりですが、たぶん、これ、もう前例ありますよね……?>という感じの奥ゆかしい? 雰囲気がうかがえ、どうにも憎めない(笑)。
 第4話も、橘作品ファン、時崎狂三ファンの末席のつもりの自分からすると、ちょっと「あれ?」と言いたくなるようなところもあるが(詳しくは言えない)。最終編の第5話まで読んで、そこでいろいろと「見えて」くるところもある。
 
 一見の人(特に『デアラ』に縁がない一般ミステリファン)が読んでもそこそこ楽しめる? だろうが、まあどちらかというと『デアラ』ファン、時崎狂三ファンの向きの一冊かも。
 特に正編や日常編の短編集、さらには番外編まで全部読んじゃった筋金入りのファンなら、本作は十分に嬉しい贈り物だろう。

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