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ミステリの祭典

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花ほおずき、ひとつ

作家 斎藤澪
出版日1987年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2023/12/16 21:26登録)
(ネタバレなしです) 「丹波篠山殺人事件」のサブタイトルを持つ1987年発表の本格派推理小説です。平凡なトラベルミステリー風なサブタイトルよりは「花ほおずき、ひとつ」の方がよいとは思いますが、ミステリーと認識されないかもしれません(笑)。婦人雑誌の取材で丹波を訪れた主人公のカメラマン郷原と編集者辻井。古い窯場の跡と本物の鬼灯(ほおずき)と見間違うほどの精巧なやきものを郷原が見つけ、それを作った男が12年前に失踪した女性を殺した容疑者らしいと聞いた辻井は興味を抱いて郷原と別れて取材を続けますが行方不明になってしまうというプロットです。12年前の事件も今回の事件も失踪ということで謎解きとしてはちょっと捉えどころがなく、郷原の家族に起こった不幸な境遇の方に興味を抱く読者もいそうです。証拠不十分なまま警察と連携して容疑者たちを追求する展開はかなり強引な印象を与えますし、最終章で犯人に対して郷原が指摘する証拠もあれだけでは弱いように思います。謎解きとしては不満の残る作品ですが、登場人物たちの複雑な心理描写が生み出す暗い抒情性は作品個性を感じさせます。

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