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ミステリの祭典

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ペイパーバックの本棚から
小鷹信光

作家 評論・エッセイ
出版日1989年03月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 人並由真
(2023/12/14 10:21登録)
(ネタバレなし)
 全部で50章ほどのアメリカ(一部イギリスほか)のペイパーバック作家、またペイパーバック関連の事項について語った研究エッセイ集。

 蔵書の山の中から見つかったので、ひと月ほどかけて就寝前に少しずつ読んでいたが、非常に楽しかった。
 とはいえ以前に一回読んだはずだと記憶があるが、本の中には特に初出連載などの記載はない。

 それでネットを探すと詳しい方のブログで、
「『ミステリマガジン』の1983年1月号から1986年12月号まで連載されたエッセイ「ペイパーバックの旅」を加筆の上、まとめた本」
 だと教えていただく(ありがとうございました。)。
 そりゃ絶対にそっちで、一度は読んでいる。

 それで本書の刊行はもう30年以上前なので、当時未訳だ、未紹介だと著者がぼやいていた作品や作家もその後、少しずつながらも発掘・翻訳が進んだりしているので、2020年代のいま、その観点から見ると興味深い。
 もちろん本書で紹介、語られたペイパーバックのハードボイルドミステリについて、面白そうな、あるいは興味を惹かれる未訳の作品はまだまだ山ほどあるが。
 
 主題は、ペイパーバックという出版文化(そのなかでも主に私立探偵小説やノワール・クライムものなどのミステリジャンル)についての著者の造詣の深さと思い入れを語ることだが、受け手のこちらにはいろいろと懐かしめの記憶を甦らせてもらったり、あるいは、へえ、近年発掘翻訳されたあの旧作は、30年以上前に小鷹氏はこう見ていたのか、という興味で楽しめる。
 そういえば本書のなかで一章使って最後の著作が語られている作家ホレス・マッコイも、近々ようやく3冊目の長編の発掘新訳が出るそうで(嬉)。

 ほかの小鷹氏の著作の大系で見ていけばまた別の見方、受け止め方もできそうな本だが、単品の一冊でいま読んで感想はそんなところで。 

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