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ミステリの祭典

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ミナヅキトウカの思考実験

作家 佐月実
出版日2023年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/12/09 12:49登録)
(ネタバレなし)
 水崎大学の新入生・神崎裕人は、新入生歓迎会の帰りに、夜の路上ですれ違った女性がいきなり全身発火して死ぬ怪事件に遭遇した。事情を聴取した警視庁捜査一課の棟方藤治刑事は何かの含みを込め、裕人に、同じ大学内のとある人物に会うように勧める。かくして過疎サークル「怪異研究会」の部室に赴いた裕人は、そこで美貌の先輩女子大生・水無月透華と対面するが、彼女は怪事件の陰に「案珍と清姫」伝説の清姫の存在を匂わせた。
(第一話「マクスウェルの悪魔」)

 プロローグとエピローグに挟まれた、全5編の連作ミステリ。基本的な内容は一応、謎解きものだが、正確にはもうちょっと幅が広い。

 若い作者(社会人の女性らしい)がそれなり以上に力を込めて書いた感じは伝わってきたが、全体的にキャラクターシフトもミステリの組み立て方の大半も、どっかで見たような印象。その辺は、ちょっと弱い。
(というか、こういうキャラクターミステリが好きそうな購読者狙いか。)

 いつか本物の怪異・妖怪に出会いたいメインヒロイン(探偵役)が、それっぽく演出された現実の人間によるオカルト犯罪をこれはニセモノ・まがい物だとバッタバッタ暴いていくという趣向は、ちょっと面白い? かとも一瞬、思った。
 でもまあ要は京極堂シリーズのアレンジだろうし、もっといえば伝記漫画の秀作(で評者の大好きな)『栄光なき天才たち』のハリー・フーディーニ編みたいだ。
 いやまあ本書の場合、その辺の文芸をちゃんと軸にしてあるのは評価しますが(ただし、その一方で、うん……)。

 全体に大味な反面、細部の工夫を拾うと意外に気が利いている? と思わせる部分もあり、トータルの評点はこんなところ。
 シリーズ化はされそうな気配もあるので、一応は意識のなかに留めておきます。

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