(2023/12/06 10:12登録)
(ネタバレなしです) 米国のグウェン・ブリストウ(1903-1980)とブルース・マニング(1902-1965)の夫婦が1930年に発表したミステリ第1作で、出版前に早くも舞台化が決まって劇作家オーエン・デイヴィス(1874-1956)の脚本により「九番目の招待客」(1930年)というタイトルで劇場公開され、1934年には映画化されたほどの出世作です。2人は夫婦コンビ作家としてさらに3作のミステリを発表するも本書ほどの成功は得られませんでしたがブリストウは歴史ロマンス作家として、マニングは映画脚本家としてその後も活躍を続けたそうです。ミステリ評論家のカーティス・エヴァンズによる序文ではアガサ・クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」(1939年)との類似点が指摘され(クリスティーの剽窃の可能性まで示唆している)、巻末解説では犯人の造形についてかなり突っ込んで解釈するなど読んだ人が何か言わずにいられない作品のようです(笑)。執筆のきっかけが大音量でラジオをかける隣人に悩まされたからでしょうか、謎の招待者からの招待客への殺人予告手段にラジオが使われているのが印象的です。本格派推理小説としての推理場面もありますがサスペンスの方が重視されているように感じました。仕掛けがかなり強引に感じられるところがあって巻末解説で褒めているほど完成度が高い作品とは思いませんが面白さは十分あり、扶桑社文庫版で300ページに満たない長さなので一気に読み通せます。
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