home

ミステリの祭典

login
小説版 ゴジラ-1.0
同題ゴジラ映画の公式ノベライズ

作家 山崎貴
出版日2023年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/11/19 10:15登録)
(ネタバレなし)
 1945年夏。零戦の特攻隊員として選抜されながら、生還して両親と再会することを悲願とした青年・敷島浩一は、愛機の故障を装い、整備兵のみが駐留する大戸島に不時着する。戦死した戦友への重い罪悪感に駆られながら欺瞞の生存の道を選んだ敷島だが、すでに敗戦を覚悟した整備兵たちはその選択を勇気ある行為だと受け入れた。だがそこに大戸島の伝説の巨獣「呉爾羅」が出現。十五mもの巨体に恐怖と神々しさを認めた敷島は零戦の機銃で応戦することが叶わず、彼の闘志の鈍化は多くの整備兵たちの犠牲の遠因となった。やがて迎える終戦。だが敷島の戦争はまだ終わっていなかった―。

 先日封切られた待望の国産新作ゴジラ映画の、公式ノベライズ。
 監督自身によるメディアミックスの小説化。

 ゴジラシリーズの前作『シン・ゴジラ』の公式ノベライズは出なかったし、アニメ作品や海外作品を別カウントにすれば、国産実写ゴジラ映画の公式ノベライズの刊行は、1999年の『小説ゴジラ2000』(Amazonで現在、古書価3万円だとよ!)以来、実に、およそ四半世紀ぶりである。
(あーあと、海外では出版されていて未邦訳の『ゴジラVSコング』のノベライズも、来年の新作『ゴジラXコング:ザ・ニュー・エンパイア』の日本公開にあわせて遅ればせながら、出してほしい。)

 で、新作映画の本編は、期待以上に出来が良かった。
 いや、ツッコミどころは皆無ではないが、得点要素の方から数えていけば十分に優秀作・傑作ではないかと。

 そんななかで映画の公開直後に、前述のように久々の国産実写ゴジラの公式ノベライズが刊行との情報を認め、ほぼ発売日にイソイソと新刊で買ってきた。

 ゴジラ映画の公式ノベライズなんて70年もの間にピンキリなので、期待値を高くすればキリがないが、いち早く読んじゃった人の下馬評がネットでたまたま目につき、(中略)ということなので、ソノつもりで読む。

 でまあ、これはこれでいいんじゃないか、という感じ。
 ストーリーは映画そのままだし、見せ場はどうしたって映画の迫力に及ばない面も多々あれど、一方で秀作映画の随所の細部を、監督自身が文章で相応に補完してある。良い意味での<水準的なノベライズ>。

 ソッチ方面の見識が薄い自分なんか、機雷の爆発メカニズムをきちんと説明してもらっただけでも、SFスーパーナチュラル存在のゴジラがいる世界を、現実と地続きのリアルな世界観にちょっとでも近づけ、引き寄せることができた。
(これって、マクリーンの『黄金のランデヴー』冒頭の銃器のリアル描写とかなどと、同じ効果だ。)

 まあ別の専業小説家のヒトに、改めて数年後にこの映画の大筋を踏まえて(多少アレンジしても可~むしろ適度に暴走して!)<本格的な小説>として、再度、肉厚にノベライズしてほしい気もするけどね。
 今回の映画そのものが、そういう伸びしろも十分にあるという意味でも、よくできた優秀作だったと思うし。

 映画は、またもう一回、二回くらい、公開中に劇場に観に行きたい。

1レコード表示中です 書評