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ミステリの祭典

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松本清張の葉脈
南富鎭

作家 評論・エッセイ
出版日2017年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2023/11/18 11:18登録)
まず、清張の朝鮮での兵隊体験を、丸山真男の同時期の同じ兵隊体験と比較検討するところから始めている。高等小学校卒で学歴差別を受けていた清張の被差別者としての軍隊体験が、普通の人の兵役体験とは大きく違っていたことはよく知られている。しかし、それを東京帝国大学の助教授で、平時なら権力の側に組み込まれることが約束されているエリートの丸山真男の兵隊体験と対比して分析する試みは、実に新鮮で面白い。
続く第二部は、清張の膨大な業績を「フィクション・ノンフィクション・真実」、「証言・偽証・冤罪」、「社会派推理小説・自殺・失踪」、「美術・真贋・史伝」という独特の四つの切り口で分析している。清張の小説に自殺や失踪が多いことを当時の自殺統計と関連付けて論じた点など、興味深い指摘も多いが、総じて第二部は第一部に比べてやや論理的な飛躍が多く、説明が不十分で説得力に乏しい部分がある。
このような不満は残るものの、清張のフィクションとノンフィクションを往復する独自の方法や大衆性に疑問を投げかけるなど、著者独自の刺激的な問題提起が含まれており、ユニークな清張論になっているのだ。

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