トッド調書 作者:ロバート・ブロック |
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作家 | コリア・ヤング |
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出版日 | 1971年01月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2023/11/10 18:23登録) 実は本作、ロバート・ブロックの作品なんだよね。「サイコ」の解説では「ゴーストライター」扱いになっていたり、日本語Wikipediaではペンネーム扱いになっていたり、いろいろ??となっていたこともあって調べたが、英語版Wikipediaがブロックの自伝をソースとして この本の署名はブロックの筆名ではない、コリア・ヤングは映画制作者で、同題の映画のプランのため、(ジャーナリストの)ジョアン・ディジョンとジョン・グレゴリー・デューンのストーリーを元にした小説の権利をブロックと共に確保しようとした。映画は作られなかった。ブロックはペーパーバックのための契約をしたが、ヤングが自分の名前でハードカバーで出版したことに衝撃を受けた。 としているのが、多分真相なんだろう。実際に書いたのはブロックだが、ヤングはちゃんとした経歴のある実在の映画人である。ボツった映画の企画と権利闘争の中で、ブロックが貧乏クジを引かされたということのようだ。本書のあとがき(署名は「S」)ではブロックのブの字もないが... 内容は心臓移植をめぐる医学サスペンス。大富豪のトッド氏は心臓病にかかっていて、心臓移植しか手段がなかった。しかも血液型がAB型Rhマイナス...稀なドナー候補がロサンゼルスで見つかり、トッドたちはロスへ飛んだ。ドナーは元オリンピック選手で下半身不随になっていた青年。車椅子の暴走事故で命を落としたのだ。トッドは心臓移植を受けるが、外科医チームの一人が、この青年の死に疑念を抱く。果たして心臓のために殺人が行われたのか? この話を「調書」というくらいだから、さまざまな関係者による「証言」で構築していく。この多面性がなかなか、いい。医師の倫理と「金で買える命」、そして真相を知ったトッドの決断...小ぶりながら、ドラマがなかなか良くできている。トッドの「妻」格の愛人がなかなかイイ味を出している。 貧乏クジを引かされたブロックだが、今ではブロックが書いたことは知られているようなので、めでたし、ということなんだろうか。 |