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ミステリの祭典

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楊花の歌

作家 青波杏
出版日2023年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 ぷちレコード
(2023/11/06 22:14登録)
一九四一年、日本占領下の福建省アモイ。カフェでウエートレスをしているリリーは、抗日活動家の楊のもとで諜報活動をしていたが、ある日、日本軍諜報員の暗殺を指示される。実行役は、琥珀色の瞳と手に彫られた蛇の入れ墨が印象的なヤンファ。二人は愛し合うようになるが、リリーは黙っていた。ヤンファが暗殺に失敗した時、彼女を殺せと命じられていることを。
四部構成だが、ヤンファの過去が描かれる第三部がダイナミックで詩的美しさに満ちていて圧倒的。暗殺犯の少女時代における精神と肉体の体験の一つ一つが、激動の時代の象徴として刻印されていく。ミステリ的な観点からすると、サスペンスや捻りは足りないが、日本統治時代を背景とした冷徹な諜報戦に巻き込まれた人々の対立と葛藤は、実に情感豊かに書き込まれていて忘れ難い。

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