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ミステリの祭典

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令嬢弁護士桜子 チェリー・ラプソディー
令嬢弁護士・一色桜子

作家 鳴神響一
出版日2019年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 びーじぇー
(2023/10/14 21:43登録)
一色桜子は、小さな弁護士事務所に所属する、キャリア一年半ほどの弁護士である。タイトルからもわかるように、令嬢という根っからのブルジョワジーなのだ。だが一色家は旧華族でありながら、曾祖父の代から法律に携わってきた法曹一家でもある。家訓は「法の下に真実を」。
桜子にあるトラウマがあった。小学生時代に無実の罪で担任や同級生に疑いをかけられたのだ。その辛い思い出を胸に、他人の濡れ衣を晴らすことを目的として弁護士になったのである。そんな桜子にとって、うってつけの仕事が回ってきた。殺人容疑で逮捕された富樫幸之介という男の当番弁護士となったのだ。しかも富樫は頑強に犯行を否認していた。
自宅は田園調布の豪邸、旧軽井沢には別荘、移動は運転手付きの超高級車ベントレー。美貌と知性を兼ね備えた苦労知らずの女性だが、少しも嫌味なキャラクターになっていない。恵まれた境遇であるが、無実の者を救うという強い意志を秘めて、弁護士の仕事に全身全霊で取り組む姿に心打たれるからだ。また時折、見せる浮世離れした天然ボケには親しみを感じてしまう。
圧倒的に不利な状況証拠、無実を唱えながら、味方である弁護士にも隠し事をする依頼人。経験の浅い桜子が、この二つの難題をどのように突破していくのか、一気読み必至の面白さだ。また法的な取材が行き届いているところにも注目してほしい。

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