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ミステリの祭典

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三年目の真実

作家 西村京太郎
出版日2003年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 E-BANKER
(2023/10/09 12:38登録)
双葉社が編んだ作者の初期作品集。昭和39年から昭和54年までに各雑誌などに発表されたもの。
作者の多芸ぶりや懐の深さについては、作者の死後改めて思い知らされてしまう。そんな作品のひとつ。
2003年発表。

①「三年目の真実」=舞台は昭和30年代終わりごろの東京。世間は空前の経済成長に沸いていた時代なのか? それでも市井はまだまだ戦後が色濃く残る・・・そんな時代背景。でもテーマは割と新しい。現代でもよくニュースに取り上げられるような話題なのだ。その辺りはさすがだ。
②「夜の脅迫者」=これは別の作品集にて既読。ただ、出来はよい。冷静になれば「こんな馬鹿なことやるか?」という気にはなるのだが、昭和39年という時代を考えればかなり斬新。徐々に追いつめられる主人公の姿がイタい。
③「変身」=同種のプロットが先行の海外作品にもあったような気はするが・・・。でも、これも②と同様で主人公の男の心情が痛いほど分かるような気が・・・。どんな時代でも男の欲望は「金」と「女」だ!
④「アリバイ引き受けます」=これはラストの反転というかオチが決まっている。まあ因果応報ということだが・・・。最近の著作(「アリバイ崩し承ります」)との相似も面白い。
⑤「海の沈黙」=初期の作品には「海」をテーマとするものも多かったが、これもそのひとつになるのか。時代背景は全然違うけれど、漁師が食えないのは今も同じだろう。
⑥「所得倍増計画」=当然ながら、その昔に佐藤栄作首相が唱えた政策(合ってる?)を揶揄しているのだけど、実に皮肉に満ちた作品。こういう小品こそ作者の腕前がよく分かるというもの。
⑦「裏切りの果て」=あーあ。小市民。なんの取り柄もない、しがないサラリーマンが嵌まってしまった陥穽。当然最後には「報い」がやってきます。アーメン。
⑧「相銀貸金庫盗難事件」=いったいなんなんですか? この作品は?ドキュメント?社会派? 結局最後まで何が言いたいのか、どういうことを訴えているか理解できないまま終了・・・

以上8編。今まで何度も書いてますが、作者の初期作品にハズレなし(たまーにありますけどね)。
本作もなかなかの粒ぞろい。ただ、ちょっと堅い作品が多いような印象。
でも読みごたえは十分。後期の気の抜けたようなトラベルミステリーとは一味も二味も違ってる。
まだまだ未読の佳作はあるんだろうなあー。
(個人的ベストは再読だけど②になる)

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