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ミステリの祭典

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影のない四十日間

作家 オリヴィエ・トリュック
出版日2021年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2023/09/26 17:35登録)
北欧の先住民族サーミ人が昔から暮らしてきた地域サプミで、サーミ人の儀式に使われていた聖なる太鼓が博物館から盗まれた。トナカイ警察のクレメットは、新人のニーナとともに捜査に乗り出すが、翌日サーミ人のトナカイ所有者マッティスが死体となって発見され、その耳は切り取られていた。これらの事件によって、サーミ人と侵略者の末裔である北欧人の関係は一触即発の状態となり、捜査は難航する。サーミ人と北欧人は歴史的に様々な対立点を抱えており、サーミ人の文明は圧迫されてきた。主人公のクレメットもサーミ人の父とスウェーデン人の母の間に生まれ、実家ではサーミ語を話していたが、寄宿学校で受けた北欧教育によって、今ではサーミ語を全く話せなくなっているのだ。そんな彼を目の敵にする差別主義者の警官ブラッツェン、極右政党の議員でもある農場主オルセンらがクレメットたちの前に適役として立ちはだかるが、途中からある人物が、彼らをも凌駕する極悪人として不気味な本性を見せ始める。内容が散漫とした部分もあるものの、後半その人物と得体の知れないところがあるサーミ人のアラスクが行動を共にするくだりは、ただならぬ緊迫感に満ちて圧巻だ。悪党たちの策謀でピンチに追いやられたクレメットやニーナが、いかにして逆襲を果たし、真実に辿り着くかも読みどころである。

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