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ミステリの祭典

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冥土の顔役
南郷弁護士シリーズ

作家 島田一男
出版日1964年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2023/09/24 17:01登録)
(ネタバレなし)
 雨の日の午後九時、助手の金丸京子とともに自分の事務所にいる弁護士・南郷次郎のもとを、ひとりの若い女が訪れた。女は南郷も面識のあるストリッパーの朝路マリだった。マリは現在、中堅会社「連立産業」の業務部長・三木賢一がパトロンの愛人だったが、その三木はつい最近、世間を騒がすゴム原料の輸入にからむ贈賄事件の被疑者でもあった。マリの話は、三木からいっしょに逃走を願われたものの、彼女は固辞、いさかいの中でマリは意識を失うが、気が付くと彼女のそばで三木が刺殺されていた。しかしマリ当人は、殺害はおろか刃物を握った記憶もなかったという。南郷はマリを京子に預け、現場である三木のアパートに向かって死体を確認するが、何者かに外から施錠され、室内に閉じ込められてしまう。

 南郷次郎シリーズ。評者は1979年に刊行の文華新書(日本文華社)版で読了。現状のAmazonでは、同書の書影はわからないが、実際の表紙(ジャケットアート)は完全に昭和のSM雑誌のソレである。気になる人は検索してみてください(笑)。

 とはいえメインヒロインのひとりマリとその友人たちがストリッパーで、ほかに艶っぽい美女も出て来るが、内容はそんなにいやらしくはなく、産業省への贈賄スキャンダルで騒がしい企業の周辺で続々と関係者が殺されていく筋立て。
 一応はフーダニットの態を為してはいるがそんなにパズラーっぽくはなく、一方で南郷はあちこち飛び回り、関係者の間を動き回り、小細工をしまくる。弁護士を主役にした国産ハードボイルドの二流半作品という感じの一本。
 
 で、これで、作者が最後にサプライズを演出しようと考えてるんなら、たぶん、犯人は……と思ったら、まんまと当たった。真相が判明すると、作中のリアルとしてフツーに無理……とは断言できないにせよ、いろいろアレなのではないかい?

 南郷と助手役の金丸京子とのコンビネーションは密接(男女の関係を意識しながら、内実ともにほとんど何も起きないのは、まんまメイスンとデラみたいだ)なのはいいとして『上を見るな』の時点ではいた南郷の奥さんってのは話題にもならず、存在感の欠片もない。きっとシリーズのこれまでのどっかでなんかあったんだな? 何もなかったのかもしれんが。

 ちなみに本作は鶴田浩二の主演(南郷役)で映画化されているようで、動きが多く、人が死にまくる派手な展開はたしかに銀幕向けではあったとは思う。当初からその企画も織り込んだ、半ばメディアミックス原作だったのかもしれん?

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