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ミステリの祭典

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日本探偵小説論
野崎六助

作家 評論・エッセイ
出版日2010年10月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 小原庄助
(2023/09/22 12:20登録)
日本の探偵小説を、それ自体の流れだけで考察することには、あまり意味がない。著者は江戸川乱歩の次に川端康成を論じ、地味井平造や大阪圭吉に続けて、内田百聞や谷崎潤一郎を論じる。また小栗虫太郎の人外魔境ものや橘外男の満州ものの延長線上に、ポストコロニアル小説として、川端康成の「雪国」や林芙美子の「浮雲」を取り上げる。日本の探偵小説という枠組みを、思い切って広げて見せたのである。
ただ、あまりに多くの作家、作品を取り上げたために、一人の作家、一編の作品については、やや論述の物足りなさを覚えないこともなかった。尾崎翠、村松梢風、花田清輝、野口赫宙などの作家や、戦時下のいわゆる「暗黒時代」の探偵小説作品にも、もう少し具体的に触れて欲しかった。それにしても、日本の近代文学の本質を十年前後という時間の中に凝縮して見せた批評の力技は、ただ感嘆する以外ないのである。

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