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ミステリの祭典

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ゴルゴタの呪いの教会

作家 フランク・デ・フェリータ
出版日1986年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/09/10 17:22登録)
(ネタバレなし)
 19世紀の末にマサチューセッツ州の辺鄙な土地「ゴルゴダ・フォールズ」に建てられた教会。だがそこは20世紀の初めに初代の神父バーナード・K・ラヴェルが猟奇的な事件を引き起こしたのち、狂乱~自殺して以来、荒れ果てたままであった。そして1980年代前半、70年代の世界的規模のオカルトブームも終焉し、各国の学界での超心理学研究も冷え込むなか、ハーヴァード大学では同分野を探求する女性心理学者アニタ・ワグナーと、その恋人で(1980年代当時の)電子機器の専門家かつ超心理学者であるマリオ・ギルバートも不遇を強いられていた。そんな二人は明確な研究成果を出そうと、怪異な風聞のあるゴルゴダ・フォールズの無人の教会に研究記録用の機材を抱えて乗り込むが、そこにもう一人の来訪者としてイエズス会の青年神父エイモン・ジェームズ・マルコムが登場する。マルコム神父の目的は、ずばりこの呪われた古教会のエクソシズムで、実はゴルゴダの教会はマルコム神父の伯父だった老神父が70年代に悪魔祓いをしようと挑みながら返り討ちにあった場でもあった。マリオとアニタはマルコム神父に協力する一方、貴重な学術上の主題としてエクソシズムの記録をとらせてもらおうとする。そんな三人を、そして……を待つものは。

 1984年のアメリカ作品。
 同じ作者デ・フェリータの『オードリー・ローズ』が予想以上に面白かったし、さらに本サイトではROM大臣さんが、続く邦訳の『カリブの悪夢』もレビューくださった。
 となるとデ・フェリータの翻訳されてる作品はあとはこれだけだし(未訳の原書はまだまだあるようだが)、どんなかな、と思って古書(角川文庫の上下巻セット)を入手して読み始めてみる。

 大筋というか大設定は王道の「幽霊屋敷もの」の変種。
 登場人物は長さ(二冊あわせて600ページ強)の割にはそんなに多くなく、特に上巻などは主人公トリオの教会での描写だけで紙幅が費やされる。
 とはいえ屋内での怪異は意外に小出しで、本当にゾクリときたのは中盤で、実は教会の外の周囲の町で起きていた異常な現象が語られるあたりから。その辺から物語は、登場人物を追うカメラアイの面でもさらに、ハーヴァード大学側やバチカンの方へと広がっていくが、この辺はあまりここで言わない方がいいだろう。
 ゾクゾクワクワク感はその辺からヒートアップしていく。

 とはいえ最後まで読むと、後半「え! そっち!?」と予想外の方向に大きく切り返した『オードリー・ローズ』に比して、良くも悪くも全体的に真っ当かつ直球のオカルト・スリラーで、その辺がいささか物足りなくもあり。
 いや、全体としてはフツーに面白いし、クライマックスにはショッキングで印象的なヴィジュアルイメージのシーンも登場するけれど。

 トータルとしては、良い意味でも逆の意味でも、定食感の強い一編。
 この手のものを久々に楽しんでみたいと思い、近くに本作があったら、それなり以上には十分に楽しめる。佳作の上。

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