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ミステリの祭典

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罪の境界

作家 薬丸岳
出版日2022年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 HORNET
(2023/09/10 20:08登録)
 浜村明香里は、彼氏との約束がキャンセルになった誕生日の夜、渋谷のスクランブル交差点で斧をもった男に襲撃された。「このまま死ぬのか…」と思った時、一人の男性が止めに入り、犯人ともみ合うった末絶命した。息絶える直前に「約束は守った…伝えてほしい…」と言い残して。自分の命を救ってくれた男性は、誰とどんな約束をし、伝えてほしいと思ったのか。体にも心にも大きな傷を負い、絶望の淵にあった明香里だったが、命の恩人のために立ち上がる―

 あまりに理不尽な災禍に遭い、もとの日常に戻れない被害者の苦悩、家族の苦悩がよく描かれている。本筋は明香里を助けて死んだ飯山晃弘の「約束」を辿ることだが、一方で犯人である小野寺圭一の生育歴を辿る方のストーリーも面白い。
 ミステリ、謎解きとしては取り立てて目を引く仕掛けではないと思うが、物語として興味を持って読み進める力は確かにある一冊だった。

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