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ミステリの祭典

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罪の境界

作家 薬丸岳
出版日2022年12月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 猫サーカス
(2026/06/03 18:35登録)
浜村明香里はデートのために渋谷で彼と会う予定だったが、彼はまさかのドタキャンをしでかす。その直後、何の前触れもなく斧を持った見ず知らずの男に襲われ、切りつけられてしまう。命があったのは、たまたま近くにいた飯山晃弘が身を挺して守ってくれたためだった。だが飯山は「約束は守った・・・伝えてほしい・・・」と謎の言葉を遺して亡くなってしまう。犯人の小野寺圭一は理解不能な供述を繰り返し、社会に衝撃を与える。本作で作者が見据えたのは、報道では伝えられることのない事件のその後だった。明香里が、遺言の謎を追う旅路の中で事件の衝撃から立ち直っていく。そして自分の思いを法廷で加害者にぶつけるのが本作の柱。だがそれだけでなく、犯人がどうして事件を起こしてしまったのかを同時に掘り下げていく。小野寺にしても手を差し伸べてくれる人が何人かいたのに、彼は踏みとどまれなかった。そうした僅かな差、罪の境界を描いている。誰でも加害者にも被害者にもなりうると作者は言いたいのだろう。

No.1 6点 HORNET
(2023/09/10 20:08登録)
 浜村明香里は、彼氏との約束がキャンセルになった誕生日の夜、渋谷のスクランブル交差点で斧をもった男に襲撃された。「このまま死ぬのか…」と思った時、一人の男性が止めに入り、犯人ともみ合うった末絶命した。息絶える直前に「約束は守った…伝えてほしい…」と言い残して。自分の命を救ってくれた男性は、誰とどんな約束をし、伝えてほしいと思ったのか。体にも心にも大きな傷を負い、絶望の淵にあった明香里だったが、命の恩人のために立ち上がる―

 あまりに理不尽な災禍に遭い、もとの日常に戻れない被害者の苦悩、家族の苦悩がよく描かれている。本筋は明香里を助けて死んだ飯山晃弘の「約束」を辿ることだが、一方で犯人である小野寺圭一の生育歴を辿る方のストーリーも面白い。
 ミステリ、謎解きとしては取り立てて目を引く仕掛けではないと思うが、物語として興味を持って読み進める力は確かにある一冊だった。

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