(2023/09/05 18:07登録)
(ネタバレなしです) 1982年発表の曽我明シリーズ第2作で、デビュー作の「原子炉の蟹」(1981年)では「曾我」表記だった苗字が改められました。発表時には新社会派推理小説と宣伝されていましたが、作中でコンピューター犯罪は1971年に始まりシステム普及につれて件数がうなぎ登りと紹介されていて、オンライン犯罪を扱った本書は当時としてはモダンな作品かと思います。発端は銀行の現金支払機が複数回人為的に攪乱させられる事件です。やがてもっと被害の大きい事件や殺人事件にまで発展します。第4章でコンピューターを使って犯人を割り出せばいいと言う同僚記者に曽我が「コンピューターというやつは人間が教えてやらないと何もできないバカなんだぞ。記憶と計算と制御、この三つの機能しかないんだ」と諫めているのが面白いですね。多少の(当時の)コンピューター用語はありますが理系でない読者にもわかりやすい謎解きです。社会派と本格派推理小説のジャンルミックス型として、コンピューター技術が進歩した現代でも楽しめる内容だと思います。横溝正史の某作品で使われたトリックの応用があったのにはびっくりです。
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