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ミステリの祭典

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獲物は狩人を誘う
私立探偵ハリイ・ストウナー

作家 ジョナサン・ヴェイリン
出版日1983年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 tider-tiger
(2023/09/04 23:57登録)
『サーヴィス・カウンターの向こうの老婦人たちは、郊外の図書館が、白い壁と木の棚と<静かに>という注意書きだけだった時代と少しも変わっていなかった』本文より

~その図書館では病的なやり口で本を切り裂かれる案件に悩まされていた。美術関連の本ばかりがすでにニ十冊以上。依頼を受けたハリイは図書館所属の調査員ケイト・デイヴィスと協力して調査を開始する。やがてハリイは未解決の殺人事件に突き当たる。異様な姿で発見された女学生……異様な本の切り裂きとなにか関係があるのか。

1980年アメリカ。私立探偵ハリイ・ストウナーシリーズの第二作。典型的なハードボイルドの筋運びに読みやすい文章、そこに本作発表当時に流行しつつあったサイコなネタを入れ込んでいる。良くも悪くも随所に80年代の雰囲気を感じさせる。そこそこ面白かったし大きな破綻もないが、各部品がうまく噛み合っていない印象が残った。

過剰な比喩と減らず口を抑制し、視点人物であるハリイにもさほど特徴がないが、文章の組み立て方はチャンドラーの影響を強く感じさせる。
悪い意味で素直といおうか、一本調子かつ予想どおりに物語は進行していく。いちおう仕掛けはあるが、多くの人はすぐに気づくのではないかと。
心理学ネタはいまとなってはもうかなり古びてしまっているが、そこにはさほど突っ込んでいないからまあいいかな。ある意味では不幸中の幸い。
探偵役のハリイは思考はするも感情の揺れがほとんど感じられず、色恋はあっても、その描き方がなんかあっさりしていていまひとつ魅力に欠けている。ヒーローヒロインよりもどことなくいけ好かない依頼主や図書館の司書たち、事件関係者の方が面白みがあった。

このシリーズは初読み。読むのはまったく苦痛ではないし、他の作品も読んでみるかもしれない。ただ、積極的に読みたいという気持ちでもない。
発売当時に読んでいればもっと愉しめたろうと思う。いまでは類似のネタを扱ったものを読み過ぎてしまっている。終盤はスリリングでなかなかよくできているし、全体的にリーダビリティは高い。
シリーズが進むにつれて面白くなっていくという噂もあるので、今後の付き合い方は次に読む作品で決まりそう。
ちなみに原題は『Final Notice』

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