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ミステリの祭典

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黄金海峡

作家 邦光史郎
出版日1981年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/08/21 22:24登録)
(ネタバレなし)
 昭和40年代の前半。大阪にある零細の海事会社「堀川サルベージ」の28歳の海事係長・笠原竜治は、謎の美女・三村しのぶから、自社(堀川~)が管理しているはずの、大戦中の沈没船「金星丸」の引き揚げ権が現在、正確にどこにあるのかの確認を請われる。笠原が調査すると、同船の引き揚げ権は、以前の会社の社員だった一柳謙作が私人として会社から購入。現在の管理権は、一柳のもとに譲渡されていると判明する。だが笠原がこの件を調べた直後、その一柳が事故死した旨の新聞記事が掲載された。自分の調査の結果と、一柳の急死に何か関係があるのでは? と考えた笠原は、一柳の娘・真澄に会いに行くが。

 邦光作品は、少年時代に『幻の広島原人』(昭和の伝説怪獣ヒバゴンを主題にしたB級作品)を読んで以来、数十年ぶりに手に取った(実は、本自体は、古書でそれなりに購入してはある……はずだ)

 本書は文章が実に平明。
 赤川次郎の諸作を不器用にまじめ書いたような文体で、よくも悪くも昭和のB級海洋スリラーといった趣で、流れるようにストーリーが進む。
 
 事件の主題は戦時中の隠し財宝を秘めた沈没船の争奪戦に、主人公の若き男女とその仲間たちが関わっていく、昭和30~40年代の国産B級活劇映画を観るような感触の内容だが、中盤からの舞台となる沖縄の旅情ロケーションにもかなりの紙幅が費やされる。
 というわけでジャンルはトラベル・ミステリに選んだ。冒険/スリラーカテゴリーでもいいが。

 元版は67年の桃源社(ポピュラー・ブックス)なので、当時、数年単位で秒読みであった小笠原諸島や沖縄の返還を視野に入れた企画かもしれない。
 最後は残りページ数が少なくなるなか、広がった風呂敷をどう畳むのかと気にしていたら、意外にうまいことまとめた。
 
 時代の昭和風俗もふくめて、それなりに楽しめた。
 たまにはこんなのもいい。佳作。

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