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ミステリの祭典

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九番目の招待客
グウェン・ブリストウ&ブルース・マニングの『姿なき招待主』に基づく戯曲

作家 オーエン・デイヴィス
出版日2023年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/11/16 09:35登録)
(ネタバレなし)
 ある年。とある週末の土曜日の午後11時。ニューオーリンズにある高層二十階建てのビルの屋上の「ビエンヴィル・ペントハウス」で、主催者不明のサプライズパーティが開かれた。謎の主催者からの招待状を手に、老若男女8人のゲストと、職業紹介所が斡旋したという老執事が集まるが、そこでラジオから流れ出る謎の声が今夜ここでゲストたちが順々に死ぬ運命を告げる。唯一の出入り口には高圧電流が流れ、高層の場からの脱出は不可能。そして連続殺人の幕が開いた。

 1932年の戯曲作品。

 同年に刊行された夫婦作家グウェン・ブリストウとブルース・マニングのミステリ長編『姿なき祭主:そして、誰もいなくなる』(あの、エドワーズの『探偵小説の黄金時代』にも記述紹介があった)をベースにした作品、という公称で初演されたらしい。
 が、今回の邦訳書の巻頭の書誌解説を読むと、いろいろややこしい事情があるような(なんか映画版『タワーリング・インフェルノ』の、原作二重構造の件を思い出したりする)。
 その原作? 小説『姿なき祭主』は数年前に邦訳も出ていて購入もしているが、あの悪名高い(らしい)シロート訳(らしい)とあとあとウワサが聞こえてきたので、コワクなり、買ったまま読んでない。
(う~ん、6000円+送料もの高いカネ払って、ナンだったなあ……と、今では少し後悔……汗。)

 という訳で原作? との比較はできないまま、こっちの戯曲版を読んだ。こういう形質の作品で、要はセリフとト書きだけの中身だから、あっという間に読める。

 でまあ、確かに『そして誰もいなくなった』の先駆的な面があるのは間違いないけれど、戯曲を読む限りお話は今となっては大味で(キャラクターシフトから、ある程度話が進んだところで、結末まで大方の予想がつく)、トリックも良くも悪くも軽業トリック。

 なにより、殺されていく連中も身を守るため、真犯人に接近するためにやっておくべきことをやってないという意味で、スキがありすぎる。

 というわけで絶対的評価としては21世紀のいま、マジメに読むとショボーンだが、当時、こういうものがありましたね、的な意味ではクラシックミステリファン、あるいは『そして~』に強い思い入れを抱くヒトは目を通しておいていいかもしれない。
(まあ少なくとも21世紀作品『孤島の十人』よりは、いくぶん面白かった?)
 
 しかしそれこそ真面目に考えるなら、叢書「奇想天外の本棚」のファンキーぶりがよくわかる一冊ではあるよな。
 評点はちょっとだけオマケ。

【2023年11月25日】
 原作? の『姿なき祭主:そして、誰もいなくなる』は、プロ翻訳家の新訳で『姿なき招待主』の邦題で扶桑社文庫から近日刊行だそうである。
 高いカネ払って、シロート訳買って、ますます馬鹿馬鹿しい(怒)。

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