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ミステリの祭典

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小説家と夜の境界

作家 山白朝子
出版日2023年06月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 虫暮部
(2023/08/10 12:30登録)
 人は何故、小説家小説を書くのか。
 本書を題材にその考察を試みるなら、重要なのは『小説家と夜の境界』と言う表題(収録短編に同題のものは無い)。
 これは “教会に寄る” の言い換えであろう。教会に寄ってすることと言えば当然 “懺悔” だ。つまり、ここに集められた物語はどれも作者の実体験であり、罪の告白を意図していると思われる。そうか、O氏死んじゃったか。雑誌掲載時期を鑑みれば、亡くなった多作家X氏はあの人かあの人……?
 特記すべきは最終話で、駄洒落みたいな題のくせに絶望と希望を背中合わせに透かし見たような美しさ。こういうのは山白女史にしか書けないと言っても過言ではなかろう。
 神父たる読者は懺悔を拒否出来ない。神様はお許しになっている。

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