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ミステリの祭典

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顔のない神々

作家 山田正紀
出版日1987年03月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 虫暮部
(2023/07/14 13:15登録)
 “SF幻代史” と謳っていて、確かに架空の歴史なんだけれど、特殊能力者が多少登場する他は明確に “これはSFだ!” と言うガジェットは見当たらない。以前読んだ時はそれが物足りなかったのだが、読み返してみるとポイントはそこじゃないんだな。
 これは時代のうねりを骨太に描いた物語、1970年代の “闘争の季節” の総括である。それを新興宗教の側から見ることで絶妙な胡散臭さが加味されて、単純な敵味方の二元論を中和している。子供達を巻き込むのは辛いよなぁ。尻切れ蜻蛉な終わり方だって、良くも悪くも革命が起きない日本への評価と考えるなら相応しいのかも。

 千二百枚を費やしただけあって皆キャラクターが立っていて群像劇としての読み応えも充分。
 埴生建二が(特に前半)倉知淳の猫丸先輩を彷彿させて可笑しかった。後半は随分グレちゃって……。

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