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ミステリの祭典

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執念
ボアゴベ作品の翻案

作家 黒岩涙香
出版日不明
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点
(2023/07/13 00:06登録)
従来ボアゴベの『囚徒大佐』("Le Forçat colonel")の翻案と信じられてきた作品ですが、"Le Forçat colonel" はそう呼ばれた実在の人物Pierre Coignard (1774-1834)をモデルとした時代小説で、本作とは無関係です。実際の原作は、娘の結婚式から帰ってきた眞川(Maugars)伯爵を待っていたのは、新婿を窃盗容疑で逮捕しに来た警察官だったという出だしがそっくりな、ボアゴベの "L'Équipage du diable"(悪魔の一団)です。
原作英語版を所々ざっと読んだところ、事件の骨格は原作どおりですが、過去の窃盗事件犯人設定も含めストーリー展開はかなり変更されています。基本的には登場人物を整理し、話を単純化してメロドラマ的に仕上げています。後半の意外な展開は充分楽しめますが、ご都合主義的偶然が多いのが欠点でしょうか。最後の一文は「譯し終りて涙香も筆を投じて嘆息之を久ふす」となっていますが、決着のつけ方も涙香独自のものです。

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