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ミステリの祭典

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丘の屋敷
別題「山荘綺談」「たたり」

作家 シャーリイ・ジャクスン
出版日1972年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2023/07/08 08:31登録)
翻訳タイトルがバラバラで厄介だけど、原題「The Haunting of Hill House」に一番近くて最新の刊行がこの題だから、「丘の屋敷」にしておこう。この作品はマシスンの「地獄の家」やキングの「シャイニング」に影響を与えたことで有名なモダンな「幽霊屋敷モノ」の古典。怪異を外的な怪異というよりも、幽霊屋敷に滞在するチャレンジャーの精神に食い込んでくるような存在として描くあたりに「モダン」があるのかなあ。確かに「モダン・ホラー」っていったい何?と改めて聞かれると言葉に窮するのだが、本作あたりがその先駆作とは言っていいんだろう。

で...いやホントになかなか超常現象が起きないホラー。札付きの幽霊屋敷にチャレンジする4人の男女。その一人のエレーナの視点で、知らず知らずにこの屋敷の「何か」に精神がシンクロしていくさまが描かれる。まさに本人の主観が徐々に蝕まれていくわけ。ジャクスンの丁寧な心理描写を通じて「フィルター」がかかった状態で、読者は「怪異」に導かれていく。
そんな解読力がかなり要求されるホラーだから、「怖くない!」という声も大きいんじゃないかな。ポルターガイストくらいは起きるけども、あまり派手な事件が起きるわけではないし、怪異の謎解きがある、というほどでもない。
ジャクスンらしい心理主義で、「くじ」所収の短編に登場するような「主人公の神経を痛めつける無神経キャラ」も後半に登場。ラストにちょっと「くじ」風の味わいがあるかな。

というわけで相当地味な作品。本作を派手なエンタメに書き直したのがマシスンの「地獄の家」だと思う。タイトルだって「ヘルハウス」「ヒルハウス」と語呂が合っているじゃん?

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