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ミステリの祭典

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ガラスの顔

作家 フランシス・ハーディング
出版日2021年11月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 糸色女少
(2023/07/01 21:38登録)
舞台はカヴェルナという地下世界。そこに住む人々は表情を持たず、「面」と呼ばれる作られた表情を使い分けているが、身分によって使える「面」の種類は異なっている。主人公のネヴァフェルは、五歳くらいの時に記憶喪失の状態でこの年に現れ、外界から隔絶されたトンネルに住むチーズの匠グランディブルに拾われる。やがて数奇で旺盛な少女に育ったネヴァフェルは、大長官が統治する宮廷の陰謀に巻き込まれてゆく。
とにかく、細部に至るまで精巧に作り込まれた地下世界の存在感が圧倒的だ。迷宮のように拡がるトンネルに、幻を見せるチーズ、記者を消したり甦らせたりするワイン、恐ろしい審問所、華麗でありながら平然と暗殺が横行する剣呑な宮廷晩餐会など暗鬱な妖しさが溢れる世界観は、マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」を想起させる。
そんな舞台でネヴァフェルは、十重二十重の危機と陰謀の渦中を潜り抜け、ついにはカヴェルナの真実に辿り着く。クライマックスの盛り上がりと、特殊設定ミステリとしての伏線回収の見事さは、溜め息が出るほどである。

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