(2023/06/30 11:07登録)
(ネタバレなしです) 英国出身で米国に移住している女性作家ジャネット・クイン=ハーキン(1941年生まれ)のミステリー作家としてのペンネームがリース・ボウエンです。日本では英国王妃の事件ファイルシリーズやモリー・マーフィーシリーズが先に翻訳紹介されていますが、最初に書かれたミステリーシリーズは1997年から2006年にかけて出版された全10作のエヴァンズ巡査シリーズです。1997年発表のシリーズ第1作の本書でフルネームがエヴァン・エヴァンズと紹介されています。エヴァンが2回続く名前だけでも皆から笑われそうですが、舞台となるウエールズでは讃美歌で「天のパン」を「ブレッド・オブ・エヴン」と歌われることから「今日はどんなパンだい、エヴァン」とからかわれる幼少時代を過ごしたようです。2人の登山客の死体が見つかり、上司の巡査部長は事故と判断しますが山をよく知るエヴァンは事故ではないと推理します。コージー派ミステリーにしては珍しい警官探偵のためか捜査描写が多いです。家庭菜園荒らしや料理泥棒などの小事件にまで振り回される展開は(コージー派ではありませんが)ピーター・ロビンソンの「罪深き眺め」(1987年)を連想しました。コージー派の雰囲気ながら18章でのサスペンスは秀逸です。作者のせいではないかもしれませんがコージーブックス版の登場人物リストは重要人物が何人も抜けていて(被害者も載っていない)、ない方が(読者が自分で作る方が)よかったと思います。本格派推理小説なら反則と批判されそうな真相にもがっかりです。
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