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ミステリの祭典

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真夜中の五分前

作家 本多孝好
出版日2004年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 ◇・・
(2023/06/29 21:58登録)
小さな広告代理店に勤める「僕」は、六年前の二十歳の時に、恋人の水穂を交通事故で失い、それ以来女性と真剣な付き合いが出来なかった。そんな折にあるプールで、一卵性双生児の片割れのかすみと出会う。「僕」はかすみの相談にのるうちに、次第に彼女に惹かれていく。
という紹介をすれば恋愛小説に思うかもしれない。事実サイドAの最後には、恋愛小説としてのクライマックスがある。しかしサイドBに移り、世界は転調する。約二年後に始まる物語では「僕」の仕事も、脇役の配置もガラリと変わっている。A面で伏せられていたカードを少しずつ明らかにして、何ともスリリングな物語を運んでいく。
恋人を失った男の物語は、ふつう再生へと向かうけれど、この作品はその方向性を取らない。それでも「僕」は少しだけ救われるという形が提示される。静謐な時間に支配された、切なくもエモーショナルな物語。

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