home

ミステリの祭典

login
希望のかたわれ

作家 メヒティルト・ボルマン
出版日2015年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 ◇・・
(2023/06/29 21:44登録)
看護師のヴァレンティナは事故の際、重度の被曝者を目撃する。事故の影響で、彼女の家庭もまた壊れていく。さらに、彼女の母がナチ時代にドイツに強制連行され、売春までさせられていたことも徐々に判明する。そして、ドイツ留学に夢を託した娘まで行方不明になり。
ヴァレンティナの運命はあまりに酷だが、物語はドイツとウクライナを往還し、ドイツの闇社会も浮かび上がってくる。人道を重んじる国ということで、現在は難民が押し寄せているドイツ。しかし、そんなドイツにも負の側面はあるのだ。
本書のタイトルは、かなり意味深だ。希望を持ち続ければ報われるという単純な構図ではなく、根拠のない希望が判断を狂わせる場面も描かれている。そのうえ、ウクライナの民主化が挫折していく様子も遠景に見えてくると、希望の所在について考えこまされることにもなる。そんななかで、希望を感じたのは警察を停職になりながらも行方不明の捜索に赴くレオニードの姿だった。一人の人間の熱意が、事件解明につながっていく。原発再開への警鐘にもなっている。

1レコード表示中です 書評