じゃじゃ馬 アル・ウィーラー警部 |
---|
作家 | カーター・ブラウン |
---|---|
出版日 | 1962年01月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2023/06/17 16:20登録) (ネタバレなし) 「おれ」ことアル・ウィーラー警部は、ふだんはパイン・シティの保安官事務所に勤務するが、本来はシティ警察の殺人課の所属で、事務所には出向の身だった。そんなある日、古巣の殺人課から呼び出しがあり、殺人課の課長パーカーはウィーラーに、失踪した店員の娘リリー・ティールの行方を捜せという。なぜこの段階で殺人課が動く? と不審を抱くウィーラーだが、どうやらひそかにリリーが殺害されている可能性をパーカーは見やっているようだ。しかも本件には、市でも最大級の実力者の大富豪、新聞社と複数の放送局の所有者であるマーティン・グロスマンがからんでいるらしい? ウィーラーは、途中で捜査を中断した殺人課の同僚ハモンド警部の後を引き継ぐが。 ミステリ書誌データサイト、aga-searchによると、ウィーラーものの第13長編。 これも大昔に読んで、まったく内容を忘れてたものの再読。 こないだ読んだ(再読した)第23作目『ゴースト・レディ』のレビューの中で、ウィーラーが殺人課出身だったという話題を書いたが、ちゃんとその文芸にスポットを当てていた作品がココにあった。やっぱ、しっかり記録を取りながら読まなきゃダメだな。 やっかいごとを押し付けられるために古巣の殺人課に呼び戻されたウィーラーは、市の大物(裏社会の荒事師まで抱えてる)を向こうにした、面倒が多そうな、ほとんど単独捜査をするハメになる(殺人課の部長刑事バニスターがちょっとだけ相棒になるのは、面白いといえば面白い)。 あまりネタを割ってはいけないが、今回のウィーラーは悪党側のハニートラップにハマってレイプ未遂犯の冤罪を着せられ、警官として失職してしまう(実績ある警官、そして広義のハードボイルド探偵としては、かなりうかつだ)。とはいえ殺人課や保安官事務所も意外に冷静で、ウィーラーが罠にはまった事実をちゃんとすぐに理解し、協力体制をとる展開も予想外で面白い。 さらに重要な証人の生命を守って悪党側と攻防戦を演じ、増援のため民間の私立探偵の協力を求めるリアリティも楽しかった。 (証人を守る攻防といえば、西村京太郎の秀作『札幌着23時25分』みたいである。) 終盤の意外な真相はやや唐突だが、サプライズ度としてはなかなか面白い。 ウィーラーの敵陣への潜入ぶりとかも含めて、全体的にB級ハードボイルドミステリ感の強い話で、読了後にTwitterで見たウワサによると、別の作家による代作の疑いの濃い一本だという? 多作のカーター・ブラウンの諸作は、一部がハウス・ネームの代作になってるらしい、というのはそういうことか。 いつものレギュラーヒロイン、アナベル・ジャクスンも一応は顔を出すものの、おなじみのツンデレコメディが皆無なのも、たしかに別作家っぽいかも。 なんにせよ、ウィーラーシリーズの中では独特の食感と歯応えがあった一本。評点はちょっとオマケして。 ちなみに原題は「The Bombshell」。爆弾ではなく、かわいこちゃん、とかの意味らしい。決して、ユニクロンによってサイクロナスに転生した、デストロンのカブト虫のことではない。 |