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ミステリの祭典

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女王の復活
Sheシリーズ

作家 H・R・ハガード
出版日1977年03月
平均点9.00点
書評数1人

No.1 9点 クリスティ再読
(2023/06/12 16:33登録)
いやこれは凄い。「洞窟の女王」の序で、レオとホリーはアッシャの復活を求めてチベットに旅立った旨が書かれているが、その17年後、ホリーの死を告げる手紙と原稿が著者の元に送られてきた....チベット放浪17年、レオとホリーはようやくアッシャの手がかりをつかみ、奥地の神秘郷カルーンに向かう。カルーンの女王アーテンはアッシャの生まれ変わりか?さらにその背後の火山を信仰する拝火教団の巫女が二人を呼ぶ...アッシャがいよいよ復活!この2000年越の神秘の恋の行方は?

傑作「洞窟の女王」をさらに上回る大傑作。「洞窟の女王」を読んでおかないとダメなのがもどかしいほど。この「神秘の恋」が小説の絵空事でなくて読んでいて感官に迫ってくるほどの迫力。まさに「読むヴァーグナー」。拝火教団の儀式に「パルジファル」が、アッシャの復活の荘厳な場面に「ジークフリート」が、クライマックスに「イゾルデの愛と死」が、読んでいる評者の脳内に流れっぱなしでありました。あの神秘的で濃密な「愛と死」の世界が小説として描かれているようなもの。

もちろん神秘の女王アッシャの美と御稜威のパワフルさは「洞窟の女王」に輪をかけており、前世からの因縁でレオを巡って対立するアメナルタスとの最終対決でも一蹴。それでも「洞窟の女王」よりも柔らかさを増している印象。それよりもイイのは、ようやくアッシャと結ばれるレオが、神秘の女王に圧倒されるのではなくて、近代人らしい自我をしっかりと発揮し、しかも「純愛」で我が身を省みずに愛に身を投げ出すあたり。惚れるようなイイ男じゃないか。このシリーズの美点は、レオの主体性がキッチリ描かれているところだと思うよ。(ヴァーグナーだと意外にヒーローが状況に流されやすい)

まあさあ、「洞窟の女王」なんて原題が「SHE」なわけだしね。「彼女」なんて抽象的で短いタイトルで、それでも大納得のスーパーヒロイン。そのさらに大納得の完結編「AYESHA: The Return of SHE」。
(けどハガードやっちゃったから、本サイトでハワードの「蛮人コナン」やっていけない理由ってあまりない気がしてきた...ハガード+ラヴクラフト、じゃん?)

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