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ミステリの祭典

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<ドラキュラ>殺人事件

作家 仁賀克雄
出版日1997年08月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 nukkam
(2023/06/12 03:48登録)
(ネタバレなしです) 仁賀克雄(1936-2017)の小説作品としては1997年発表の本書がおそらく最後ではないかと思います。作者は1995年に「ドラキュラ誕生」という研究書を発表しており、私はそちらは未読ですけど吸血鬼伝説や吸血鬼文学を詳細に紹介している本書はその派生作品ではないかと想像しています。作中舞台は1896年から1897年にかけてのロンドンで、ホラー小説の古典「ドラキュラ」(1897年)を執筆中のブラム・ストーカー(1847-1912)が登場していますし、探偵役を務めるメルヴィル・マクノートン主任警部(1853-1921)も実在の人物です。「ドラキュラ」のヒロインのミナの造形に影響を与える人物として尾張徳川家の末裔の徳川美奈を登場させたのが作者が意図した「事実と虚構をないまぜに書いたミステリ」の所以でしょう。講談社ノベルス版で「ゴシックロマン風本格推理」と紹介されていますが、血を抜かれた死体の謎が興味深くて真相も印象的ですけど推理を披露しての説明ではないので本格派を期待するとがっかりすると思います。犯人当ての面白さも放棄されています。グロテスク描写が抑制を効かせているのも(個人的にはありがたいですけど)賛否両論かもしれません。

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