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ミステリの祭典

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ドッペルゲンガーの殺人
警視庁捜査一課事件簿

作家 阿井渉介
出版日1994年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2025/12/09 23:30登録)
(ネタバレなしです) 1988年から1993年にかけて発表された全10作の列車シリーズに続いて書かれたのが「まだらの蛇の殺人」(1994年)に始まる警視庁捜査一課事件簿シリーズですが、シリーズ第6作である本書まで全部が1994年に一気呵成に発表されており、その創作力には頭が下がります。本書は章子(あきこ)に語りかける晶子(しょうこ)というスタイルで書かれた日記及びモノローグと、連続猟奇的殺人事件の捜査が交互に描かれる構成の本格派推理小説です。日記及びモノローグを通じてこの書き手が二重人格の殺人犯ではと思わせる叙述があり、一方で捜査担当の堀刑事は婚約者の父親である菱谷刑事のスキャンダル疑惑に悩まされ、婚約破棄の危機を迎えます。犯人当てとしては読者が推理する余地がなく、解決も唐突で謎解きとしては説明不足の感があります。どちらかと言えばトリックに定評ある作者ですが本書では特筆すべきトリックもありません。本書がシリーズ最終作となりましたが特に演出面の工夫もなく、作者の創作意欲が急に失われてしまったのではと心配になりました。

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