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ミステリの祭典

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群がる鳥に網を張れ
保険会社調査課長マドックス

作家 ハドリー・チェイス
出版日1971年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2023/06/05 04:24登録)
(ネタバレなし)
 保険会社「ナショナル・フィデリティ」の青年外交員ジョン・アンソンはやり手で高収入だが、一方で女とギャンブルが好きで支出も多く、いつも金策に追われていた。そんなアンソンは、40過ぎの園芸家フィリップ・バーロウの若くて美しい妻メグと、保険の契約の件で知り合う。ひそかに作家志望というメグは、夫殺しの女を主題にした創作の案を語るが、アンソンはそれが現実に、夫を殺して保険金をとろうと願い出る彼女の意思表示なのだと気づく。

 1963年の英国作品。
 本作の主人公アンソンが悪女メグとともに犯罪計画を企てるクライムノワール・スリラーだが、アンソンの勤務する保険会社の調査課長(不正な保険金詐欺がないか監督する)の中年男マドックスを主軸とする「マドックス・シリーズ」の一本でもある。
(同シリーズは大昔に『ダブル・ショック』を読み、それは今でも部分的に、結構内容を記憶しているつもり。)

 まぎれもないチェイス作品ではあるのだが、なんか話の題材というか主題がそれ以上にJ・M・ケインの諸作という感じのクライムストーリー。
 話の流れは良くも悪くも、まあそうなるだろうな、とか、ああ、やっぱりね、なるほどね、という感じの展開が連鎖していき、退屈はしないが、さほどの緊張感も湧かない。
 つまらなくはないが、良くない意味でこの手のものの定食という印象。
 お腹はふくれるが美味かったかというと微妙な料理、みたいな手ごたえであった。
 チェイスとしてはそこそこ、の方であろう。

 評点は、正に「まあ楽しめた」なので、この点数で。

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